タブチベトナムの概要
鈴木
改めて、タブチベトナムさんについて教えてください。
出村氏(以下:出村)
当社のメインの事業は水道局との関係でバルブやパイプなどを製造・販売しております。ベトナムには2012年の終わり辺りから出張ベースで来るようになり、2014年から現地法人を立ち上げて進出いたしました。日本と同様、水道局へ日本品質のバルブやパイプを商品として販売して行くのが目的でした。しかし、海外でお役所にあたる水道局の門を開くのはそう簡単ではなく、最初は相手にもされませんでした。長期的には我々のメインの分野で攻めたかったですが、短期的な経営を見た時に、どうするかって悩んでいたんです。そんな時駐在の方々から「ベトナムの水事情はひどい・・・」と言ったお声を聞き、なんとか解決する方法はないかと考えました。
日本の取引先に、浄水器を世界80カ国に販売しているメーカーの「マルチピュア」さんと繋がりがあることを知り、ベトナム独自のサービスとして、アメリカ製のカートリッジの浄水器を販売することを決めました。現在は、事業の8割が水道局にバルブやパイプを販売し、2割が浄水器を販売しております。
鈴木
そのような背景があったんですね。
しかし簡単に始められる事でも無いかと思います・・・どのような壁があったんですか?
出村
浄水器を販売するとなった時、実は社内で議論になりました。まず、我々はベトナムの水道局をお客様としているので、浄水器を販売するということは結局、水道局が作った水を批判してしまうことになるのではないか、という点だったのです。更に、日本では販売していない商品のため実績が無く、どのようなリスクがあるかも分からない。といったようなポイントでした。
しかし、私自身諦めきれず、まずは自分で使ってみて安全性を確認しました。人体実験といった所でしょうか。数か月経っても、身体に影響が出ないか、自分の家に浄水器を設置して確かめました。さらに第三者機関にも持ち込み検証した結果、ペットボトル水より安全な事が証明されました。
このような結果と、ベトナムの現状を説明し、どうにか社内を説得して販売を始めることが出来たんです。
鈴木
今では多くの飲食店に導入されてるとのことですが、販売初期はどのようにアプローチされたんですか?
出村
現在もそうですが、当時は今以上に、ウォーターサーバーが浸透していました。我々の浄水器は実績が無いことから、無料でも構わないからモニターとして使ってほしいとアプローチしても信用してもらえなかったんです。そんな時、かき氷がメインのカフェ屋さんで導入してもらいました、するとたちまち口コミで広がり、説得力も増して、信頼してもらえるようになったんです。
鈴木
現在は飲食店の他に、どのような業種に浸透していらっしゃるのですか?
出村
現在は年間約400台販売しております。比率で言うと90%は日本人のお客様、日系レストランはホーチミンで約120店舗導入していただいております。
飲食店以外の業種では、病院施設や幼稚園、日本領事館などですね。その様な施設に設置することで信頼性が高まった部分もありますね。
ベトナムへの進出
鈴木
出村さんは会社がベトナムに進出すると決まった時に代表に立候補されたのですか?
出村
いいえ、実はそうではありません。自然と私になっていたんです(笑)正直僕でいいの?って想いもありましたが、購買部門の責任者をしており、海外出張もあったので、海外なら出村だな!って感じでした。次の担当者が決まるまでって話だったのが、気が付いたら8年です(笑)
鈴木
そうだったんですね!
海外の中でもベトナムに進出が決まったのはなぜだったのですか?
出村
日本の人口って減っていく一方で、家は建たなくなってき、我々の様な水道関係の商材はマーケットとしては今後小さくなっていきます。日本国内ではガス用配管など、商品のバリエーションを増やして対応していますが、それとは別に新しいマーケットを増やして行かなきゃならないとなった時、東南アジアの開拓を考えたんです。タイ・マレーシア・シンガポールも考えましたが、排水管に着目すると既に浸透し始めてきていて、水道普及率も高く、後発的になります。今後の交換需要はあるかもしれませんが、伸びていくマーケットではない。一方ミャンマーやラオス・カンボジアは当時まだまだ普及率が20%くらいで、水道以前に土木工事から始めなければならない、そのちょうど間にあったのがベトナムでした。地方と都市部でたいぶ差はありましたが、水道が普及していこうとしていたり、ホーチミンは大阪市の水道局と提携があり、縁もあったのでこの国に決めました。
ベトナムの水事情
鈴木
ベトナムの水が飲めないと言うのはもはや一般常識になっていますが、具体的に何が原因ですか?
出村
実は浄水場の水は日本と同じくらい綺麗なんです。
鈴木
えっ!?出村さん、流石にそれはご冗談ですよね・・・?
出村
いえいえ(笑)本当に綺麗なんです。要するに、浄水場から蛇口をひねるまでの配管が原因で飲めなくなります。私が来た当時のホーチミンでは、配管の漏水率が4割もあったんです。配管の所々に穴が開いていて、そこから綺麗な水がどんどん外に出てしまうのはもちろん、逆に外から菌やゴミが侵入してしまいます。日本では水が通る鉄の水道管の内面はプラスティックでコーティングされてるので錆びないのですが、ベトナムでは鉄の部分がむき出しの配管が多いのでどんどん錆びてゆき、綺麗な水を運べる環境ではないのです。
▲使用前|使用後
鈴木
そういうことなんですね。
それは今後改善されるのでしょうか。
出村
現在、配管の漏水率は2割まで下げることが出来ています。ホーチミン市も今までの鉄のパイプからプラスティックパイプに使用に徐々に切り替わってますが、まだまだ昔の古いものが沢山埋め尽くされているんです。それを全て工事するとなると、費用も莫大なので、直ぐ改善されるのは難しいと思います。おおよそ20~30年はかかるのではないでしょうか・・・。ベトナムの中部にあるフエという都市では、横浜市の水道局とタックを組んでおり、約10年前に配管を日本製の物に変える作業をしたことで、一部のエリアでは水道水が飲める環境にあるのです。
ボトルウォーター
鈴木
30年後・・・ベトナムで水道水が飲める日が待ち遠しいですね!
それでも街やオフィスを見ると、ボトルウォーターが主流な気もします。
出村
ボトルウォーターでも、皆さんがご存じの大手のメーカーは安全性を確保していらっしゃいます。しかし2014年にホーチミンの保健所によって、小規模飲料水メーカー152社を調査したところ、安全基準を満たしていたところはたった4社だったのです。回収したボトルを洗浄していなかったり、トイレなどの不衛生な場所の近くでボトリングしていたりということもあったようです。ボトルウォーターを選ぶ時は、「信頼できるブランド」と「信用できる所」で購入するのが良いと思います。
飲食店が浄水器を注文するとき
鈴木
そんなボトルウォーターが主流の中でも、ホーチミンで120店舗と浄水器の取引していらっしゃるタブチベトナムさん。飲食店様がオーダーしてから取り付けまでの流れをお教えください。
出村
ホーチミン市内であれば、ご注文頂いたその日に取り付けることも可能です。取付作業もおおよそ5分~10分です。中には少し変わった特殊な蛇口があるのですが、その際は少しだけお時間を頂戴することもございます。蛇口にバルブを取り付けて浄水器を設置することにより、今まで通りの水道水と、きれいな浄水とをレバーで切り替えることが可能になるのです。飲食店様の場合は、例えば食器などの洗い物の時は水道水を使用し、食材に関わる水は浄水に切り替えるといった使い方がカートリッジも長持ちして便利です。
鈴木
飲食店はキッチンの中に沢山の蛇口がありますが、大体平均で何個くらい設置されるのですか?
出村
店舗規模や業種によって異なりますが、一般的な店舗様は1台です。先程も申し上げた通り、食材を使う場所を一か所に決めて、必ずそこで使用すると前もって決めていらっしゃるお店が多いです。お試しとして1台導入してみて、その後追加で設置してくださるお店もございます。お寿司屋さんやラーメン屋さんなど、鮮度や使う水の量が多い業態などは1店舗で4、5台設置していただいているお店もございます。
カートリッジの交換
鈴木
自分でカートリッジを変えるのって大変そうなイメージなのですが・・・
出村
とっても簡単です!YouTubeに取り換えの動画があるので、詳しくはそちらを見ていただければと思います。音声は日本語、ベトナム語で字幕もありますので、お店のスタッフでも取り換えは出来るかと思います。もちろんご希望でしたら我々がお手伝いも致します。
鈴木
どのくらいの頻度で変える必要があるのですか?
また、変えるときはお店から連絡をする必要がありますか?
出村
一般のご家庭は1年に1回ですので、我々からご連絡させて頂いております。飲食店さんの場合は、やはりお店の業態によって変わります。
交換の目安として、カートリッジが詰まっていくことでどんどん水が出にくくなってくるので、その時は交換時期となるでしょう。その状態のままは絶対使用しないで頂きたいです。浄水器の意味がなくなってしまうので・・・。最初の取り替えの時は店舗様からご連絡をしていただく必要があります。しかし、2回目以降は弊社で初回の記録を取っておりますので、同じくらいのスパンになったら、こちらから「もうそろそろ交換時期です。」と連絡させて頂いております。
使用方法も慣れてきて、毎回注文するのが面倒ということでしたら、カートリッジのストックをしておく方が良いかと思います。料金表からも分かりますが、3000リットルの水をろ過できるため、1リットルに計算すると5円。ボトルウォーターよりお安いです。
▲料金表※詳しくはお問い合わせ下さい
今後の展望
鈴木
確かにおっしゃる通りですね!
今後のタブチベトナムさんの展望をお教えください。
出村
浄水器で申し上げると、今後はローカルのベトナム人の方たちへマーケットを広めていきたいです。しかし、日本人の方は浄水器に関する知識をある程度持たれていらっしゃいますが、ベトナムの方はそうではないのが現状です。そもそも小さいときから「水道水は飲んではいけない」と育ってきたので、いくら浄水器を付けたからと言って、水道管を通って出てくるものを飲むこと自体が当たり前ではないのです。なので「あのお店でも使ってるんだ!」「あの人も使ってるんだ!」と思っていただきながら、信頼性を培っていこうと思います。
後は、代理店などを通じてハノイにもさらに展開をしていく予定です。これもご縁ですが、ホーチミンで経営されてた飲食店の方が、ハノイにも出店し、我々の浄水器を是非ハノイに!とおっしゃって下さったのです。とても嬉しかったですね。
本業である配管のバルブなどに関しては、今年からラオスに展開を予定中です。これはコロナ後になりそうです。ベトナムの良い意味での成功例を持って行きたいです。
飲食店に一言お願いします!
鈴木
止まることなく前に進んでいますね!
まだ渡航規制があるベトナムですが、今後進出を検討されてる日本の飲食店オーナーさんに一言お願いいたします!
出村
コロナの状況はあれど、ホーチミンは日本人の在住者は多いですし、東南アジアではトップレベルの日本人街もあります。国にかかわらず、日本食を求めている人は沢山いるのです。そして、先陣となって進出している日系飲食店も多いことから、情報を収集する環境だったり、共有してくれる方は沢山いると思います。勿論、その分競争が激しいので、簡単ではないかと思いますが、誰もいない所に情報がない状況で進出するよりも、いいのかなあ、と感じます。そして、進出した際には、是非浄水器のご検討もしていただきたいです!いつでもご相談していただければと思います。
あとがき
自身を実験台として浄水器のテストを行った出村さん。海外在住者にとって、水の問題は生活に支障が大きく、ストレスの1つにもなる。さまざまな飲食店で導入されていることによって、生活に密着させ、安心を提供してくれているのだ。ベトナムの根本的な水道配水管の問題を解決することと同時に、タブチベトナムだからできる方法で我々の生活を豊かなものにしてくれている。30年後のベトナムで水道水が飲める時が来た時、この記事を読んでいる貴方に伝えたい。「その水は努力と苦労の賜物なのだ。」
※上記に掲載されている情報は、掲載日(2020/06/15)現在の情報です。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、各店舗へお問い合わせください。