ベトナムホーチミン市至近に加工工場を持つ日系精肉業者「ELTベトナム」(本社:東京)。肉をメインに魚や野菜などの食品も輸入し、加工から配送まで手掛ける独自のスタイルを持つ。今回はELTベトナム代表取締役、奥村大氏(写真上)にELTベトナムが取り扱う「肉」についてお話を伺った。
ELTベトナムの会社説明をお願いします
本社は東京の上野に籍を置いております。本社の方は主に食肉を扱う商社でして工場などは持っていません。ソーセージ、フライドチキンなどの加工品をタイやブラジル、ヨーロッパなどから輸入して日本で販売しております。当社ELTベトナムでは輸入肉やベトナム産の肉の加工販売だけでなく他社より持ち込みしていただいた食材の加工というのも請け負っております。今現在はだいたい270店舗ぐらいと取引をしております。
ベトナムの拠点を構えられた経緯とは
本社社長にベトナムで何か商売ができないか見てきてほしいと言われまして、来てみたらベトナムのこれからの可能性を肌で感じたのでやってみようという方向になりました。私がベトナムに来たのはちょうど5年前になるのですが、その時ちょうど日本からの牛肉の輸入が解禁になると知っていたので、そういったことも含めて、可能性を追求していこうと思いました。ベトナムで輸入・加工販売を選択したのは、海外で加工されたものを輸入するより、こちらで加工販売する方がコストが断然抑えられレストランに供給しやすいと考えたからです。加えて、当時日系企業で輸入・加工販売をしている企業がなかったのでそこも選択の理由の一つです。
ELTベトナムの商品ラインナップ
肉のスライス加工はもちろんですが、惣菜系でいいますとハンバーグ、トンカツ、餃子、シュウマイ、そしてラーメン屋のためにチャーシューなども販売しています。魚や野菜の加工品、鍋セットなども販売しております。ELTベトナムの工場周辺には日系企業も多く、昼食を食べる店も少ないため一昨年の10月からお弁当販売も開始しました。お弁当はこの辺りの他にもキズナ(ロンアン周辺の工業団地)や7区がメインターゲットになっています。
ベトナム産牛のブランドとは?
ベトナム牛はブランドはないです。ほとんどが水牛の様な赤牛で生体はインド、オーストラリアから来ているものがほとんどです。ローカルのレストランの多くは赤牛を使用しています。日系、韓国系など含めて焼肉屋の多くはアメリカ産の牛肉を使うところがほとんどです。当社も牛肉の取り扱いはアメリカ産がメインです。オーストラリアの牛肉も一部使っているのですが、やはりアメリカ産の方が美味しいのでそちらがメインです。値段としてはアメリカ産の方がオーストラリア産より少し高いです。この2つの肉の大きな違いは餌で、アメリカ産は麦やコーンなどの穀物を使用するため味がマイルドになりうま味が出ます。オーストラリア産は草を使用しているため肉が少し硬く臭みも出てしまいます。ベトナム産の牛も草をメインに使用していますのでどうしても肉が硬くなってしまいます。それにベトナム産の牛は赤身が多く、和牛の様な霜降りはないです。しかしその分他の肉と比べてもリーズナブルな価格です。
牛・豚・鶏の値段
スライスした牛肉ロース系ですと販売価格で1キロ辺り600,000VND(約3,000円)前後です。豚バラ肉ですとスライスして1キロ辺り130,000VND(約650円)前後ですね。鶏肉ですと1キロ辺り80,000VND(約400円)前後です。
▲肉のスライス室
ここで冷凍のまま肉をそれぞれ適切な形、大きさにスライスしていく。月間約50トンの生産量を誇る。室温は12℃前後
豚肉・鶏肉の仕入れ
鶏肉はベトナム現地と鶏肉をアメリカから輸入している業者がいるのでそこから仕入れています。当社は直接海外から輸入するのではなく、輸入している業者から買うということもあります。
牛・豚・鶏・それぞれの売れ行き
レストランのジャンルによって異なります。和食レストランですと、牛肉や豚肉、鶏肉、ラーメン屋ですと圧倒的に豚肉です。
肉の質の良さを保つ秘訣
当社の輸入する肉は冷凍肉のみです。まず入荷の際に徹底的に品質をチェックします。ダメならダメだと返します。生き物なので同じ育て方をしていても個体差があるので、そこを踏まえて形、鮮度等を厳しくチェックします。肉は解凍されたら鮮度がガタ落ちしますので解凍させないように入荷後は-2℃~-5℃の温度でスライスし、すぐに-40℃のブラストフリーザーに入れ、鮮度をキープします。その後-20℃の保存室で保管し、配送となります。鶏肉のレバーなどもフレッシュな状態で提供できるのでたたきなどの料理にも使用できます。
写真:食品の保存室にて商品の紹介をしてくださる奥村氏
室温は-20℃
肉の質の見極め方
私は脂の色を見ます。古い肉だと少しくすんだ色になってしまいます。鮮度のいい肉の脂はきれいな白色ですが、オーストラリア産の牛肉ですと餌が牧草ですので脂は少し黄色です。
和牛に対するベトナム人の評価
日本人は和牛の美味しさを既にわかっていますが、ベトナム人は和牛を食べて最初は脂っこさに少し驚かれます。ベトナム人は脂っこいのがあまり好きではないので最初の評判はいまいちなのですが、段々慣れてくると美味しいと言っていただけるようになります。富裕層は少々値段が高くても和牛を好まれます。
問屋との取引
ベトナムの問屋は調味料などの常温管理できるものを扱う業者はいるのですが、冷凍冷蔵が設備がないので肉を扱える問屋が少なく、ほとんど工場や町の小さな加工場から直接出荷という流れです。そこが問屋業を兼ねてやっています。業者にトラックでの配送を頼んだら配送コストが高くなってしまいますので、当社ではよほど大きな配送でなければ自分たちでバイク便で配送しています。創業当初はバイク配送も業者に頼もうと思っていたのですが、ベトナムでは飲食店から当日や前日の夜中にオーダーが入ることが多いためバイク業者とのタイミングが合わず当社ですることにしました。冷凍肉はある程度ストックしておくことができるので前日夜中の急なオーダーだとしても対応することはできます。ベトナムの飲食店からのオーダー頻度というのもなかなかバラつきがありますので、ある程度ストックを持っておくというのは注意しております。
取引のエリア
現在はホーチミンがメインです。それ以外のところですと、バス便でダナンまで運ぶことがあるのですがそれだと時間がかかり鮮度が保ちにくいのが難点です。
▲-40℃で食品の鮮度を保つブラストフリーザー
スタッフ教育に関してのご苦労
当社は私以外全員ベトナム人です。ベトナム人は長く務めるということがなかなかないので、人材が育ちにくいという点で苦労しました。最近は安定して務めてくれるスタッフが増えました。教育に関して1番重要視しているのは挨拶です。お客様が来られた際にきちんとした挨拶ができるようにと教えています。
肉業界において日本で働くベトナム人の増減傾向
当社の日本の関連会社では研修生を日本に呼ぶという活動が10年近く前から行われています。3年間の研修制度として毎年5~7人ほど行っています。
今後の展望
輸出をやってみたいとは思っています。当社は肉だけでなく魚や野菜なども加工販売していますので、そういった商品を周辺国へ輸出していけたらと思っています。これから事業拡大に向けての大きなポイントは輸送コストと鮮度維持です。これがクリアできない限りはなかなか難しいです。
競合他社
日系企業でいうと数社ありますが、他者はハムなどの豚肉がメインで、当社は牛肉や惣菜がメインにやっておりますのでライバルながらお互いがお互いの商品を買ったりしており良好な関係です。
Foobiz Vietnamの読者へメッセージを
なかなか出店が難しい中、私自身以前焼肉屋を経営しておりましたので、ベトナム特有の目に見えないしがらみなどそういった面でも上手く切り抜けていく方法などアドバイスしながら出店のサポートをさせていただけるのでないかと思います。
shop information
屋号 | ELTベトナム |
---|---|
電話番号 | 028 3873 4081 |
住所 | Lot M-5A, Trung Tam st, Long Hau Expand lP, Long Hau Commune, Can Giuoc Dist, Long An Province |
営業時間 | 8:00 – 17:00 |
定休日 | 日曜日 |
ホームページ | http://www.eltvn.com |
※上記に掲載されている情報は、掲載日(2019/04/18)現在の情報です。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、各店舗へお問い合わせください。
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