近年ベトナム・ホーチミンの飲食店事情はレッドオーシャンとも言われている。そのため、進出するには「あえて」中心を避けたほうが良いのかもしれない。6年前からホーチミンは7区の日本食事情を知る、「どんのすけ」「かどはち」の植田真一氏(うえだしんいち 写真左)・竹本良次氏(たけもとりょうじ 写真右)にインタビュー。7区に出店するメリット、デメリットとは何なのだろうか。
2人の出会い
鈴木 本日はインタビューを受けていただき、ありがとうございます。お二人はいつ出会ったのですか?
竹本氏(以下:竹本)
植田は、18歳から26歳まで『料理の鉄人』にも出演経験ある方の元で、和食を学んでいました。その後単身イタリアに渡り、チーズとワインにてもついても学んだりしておりました。帰国のタイミングでワインを取り扱うお好み焼きの新店舗の立ち上げを手伝ってほしい、と相談があり、気がつけば14・15年くらい働いたようです。
私が植田と出会ったのは、私が30歳、彼は35歳のときで、植田が働く会社に面接を受けに行ったら、そこの面接官をしていたんです。
植田氏(以下:植田)
そうそう、当時飲食未経験でパチンコ屋のボンボンだったよね(笑)
竹本
ボンボンだったことは否定しませんが(笑)面接に合格してから一緒に働きまして、それから5年後、植田から「俺も40歳になったし、チャレンジするにはラストチャンスかもしれない。昔から挑戦したかった東南アジアで勝負したいと思っている。」と相談をされました、当時植田は専務兼料理長、私は本部長のときでした。役職の立場もあったので、簡単には辞めるわけにはいかなかったんですが、社長や会長にも話して、背中を押してあげました。
7区に行き着くまで
鈴木 そんな2人がベトナムに来られた経緯を教えてください。
植田
僕は6年前、7区のクレセントモールにオープンするお店の店舗の立ち上げサポートで参りました。
竹本
そうだったね。私は植田がベトナムに行って、ちょうど1年後くらいに行きました。そこから2年くらい同じ会社で店舗立ち上げとして出店を重ねました。その会社は出店スピードも早く、7区では2店舗の立ち上げに関わりました。この後、タイミングなどもあり、2人が良く熟知している7区でお店を始めようかとなったわけです。
鈴木 いよいよ「どんのすけ」の出店ですね!日系の飲食店はレタントン通りなど日本人の母数が多い場所に出店を検討される方が多いと思いますが、1号店を7区に出店された理由は?
植田
7区に出店した理由は2つあります。一つは、先ほども言ったように、僕らが7区のことをよく知っていたからです。立ち上げ、店舗運営も多くも経験しましたので、7区のお客様の傾向や、外食に期待することは把握できていたと思います。更に僕たちも7区に住んでいて、飲食店選択肢の少なさも感じていました。もう一つは、ベトナムの現地の方に受け入れてもらえるお店にしたい、と考えたからです。僕らの理念は『本物の日本食を世界の人々へ』でして、海外の方に本物の和食を提供したいんです。それを考えると、日本人街より7区の方が僕らのミッションに近づくことができると思うんです。
上記の2つの理由があって7区に出店しましたが、戦略上レタントンなどの日本人街に出店することが必要な店舗もあるとは思います。マーケティング、理念、戦略で考えるのが大事ですよね。そういった考えで、2018年5月、「どんのすけ」をオープンさせました。
鈴木 とっても分かりやすいです!ちなみに7区はどういった街なんでしょうか。
植田
簡単にお伝えすると、住宅街です。日本人学校もありますので日本人ファミリーは多いです。韓国人学校、インターナショナルスクールもありますので、各国の駐在さんが多く住んでいます。また7区界隈に工場系もたくさんありますので、工場にお勤めの方も多く住んでいる街だと思います。
鈴木 ファミリー層の集客も大事になりそうですね。
竹本
そうですね、家族、お子連れのお客様も多いので掘りごたつにはしていないです。内装費が高いということもありますが(笑)お子様たちが床でゴロゴロできるような、安全な設計にしています。後はキッズメニューを置いたり。
▲2階には個室も
今の業態の決定打とは
鈴木 どうして「和食」ではなく「うどん」にしたんですか?
竹本
植田は和食の基本ができますし、様々な業種を経験してますので、色々なジャンルの料理ができるんです。その中で考えたことは3つで、エリアのターゲットに合う料理を提供すること、ベトナム人の方に自信を持って提供できる料理、そして前職に迷惑をかけない業態・業種であることでした。7区の特性は先ほどお伝えしたようにある程度理解していましたので、どんな料理が人気なのか、出数のABC分析自然に身についていたというイメージですね。例えば「焼きそば」と「焼うどん」がメニューにあったんですが、出数は10倍くらい違く、うどんが人気でした。
鈴木 うどんの麺はどこから仕入れているのですか?
竹本
植田の繋がりの一つに、山口の製麺屋さんがありまして、卸していただくようお願いしました。特徴は「コシ」があることでした。ベトナム人はやわらかい麺が好きという話もありますが、僕らの麺はコシが強いです。押し付けるわけじゃありませんが、日本の、本当に美味しいうどんを提供したいんです。
鈴木 2号店は「釜飯と炭火焼き」がメインのお店ですが、業種を決めた経緯を教えてください。
竹本
7区のこれからの可能性を見据えてドミナント出店を考えてました。業態・業種を考えたときに、お客様が「今日はA店に行ったから、明日はB店にいこう」と、両方の選択肢に入れるものがいいなと考えました。「どんのすけ」にはまだない料理から考え、今がうどんならその逆のお米、更に焼き物かなあと。ベトナムは炭火を使う料理に馴染みがありますので、焼き物は受け入れてもらいやすいなともお思いましたしね。
植田
ベトナム人に美味しい日本のお米を知ってほしいという思いもありましたね。僕たちの理念でもありますが、海外で美味しいご飯を提供したいなと思ったんです。
▲1番のオススメは俵屋さんから仕入れたななつぼしの釜炊き白飯38,000vnd(約190円)
釜飯の評判
鈴木 釜飯の評判はいかがですか?
竹本
とてもいいです! ランチを食べたお客様がぽろっと「お米めっちゃ美味しいよね」という声が聞こえたことがありまして、僕らの選択は間違ってなかったのかなと思いました。お米は「ななつぼし」と「ゆめぴりか」を比較して、「ななつぼし」の方がASEAN圏内、ベトナム人に受けるかなと思い、そちらを選びました。
鈴木 お米の炊き方を指導するのは難しそうですね。
竹本
日本で働いていたときも、前職で働いていたときも、考えていたのは「どうしたら美味しい料理を安定して提供できるのか」ということでした。「釜飯」も安定して提供するために考えた結果、日本製の全自動ガスの炊飯器を使うことにしました。釜飯は、水温、お米の量、火加減、釜の厚さなどによりご飯の味はかなり変わります。安定して美味しい釜飯を提供するには、全自動の炊飯器はとても大事だと思います。
▲焼き物は備長炭の仕様
▲食べた瞬間伝わる炭の香り
オープン後
鈴木 「釜飯と焼き物のお店」の客単価、ベトナム人の割合を教えてください
竹本
客単価はファミリー層で250,000vnd、飲む方で400,000vnd、慣らすと300,000vndくらいでしょうか。集客としてベトナム人の方の割合を50%を目標にしてますが、現状は20%くらいでです。オープンして3ヶ月、コロナの影響もあるとは思いますが、もう少し伸ばしていきたいですね。
鈴木 現地の方に受けるために、味付けなど意識していることはありますか?
植田
現地ベトナム人の方の好みに合わせて料理する、ということはできるんですが、あえてそうはしていません。というのも、特に新店舗の場合なんですが、最初の来店はほぼ日本人の方なんです。その方達がまず食事をして、ベトナム人の方に口コミをするようなイメージで。そのときに「あそこの料理は本物の日本食だよ」と伝えてもらうことが大事なんですよね。最初からベトナム人の方向けに調整して、「本物の日本料理じゃない」「あまり美味しくない」と口コミされてしまうと、現地の方の集客が難しなるんですよ。
▲記念日利用で注文が多いという寿司ロール 158,000vnd(約790円)
パートナーシップ
鈴木 パートナーシップって・・・どうですか?!
竹本
最初、株式会社キングス ノウの社長から「業務委託やパートナーシップは成功例を聞かない。パートナーシップでやるかどうかのラインは、この人たちとだったら失敗してもいいかどうかと思えるかどうか」と、言っていただき、信頼していただいてることに、ありがたいと思いました。僕らのマネジメントは結構厳しい方だと思うんですよね。でも社長が2人で経営している1号店にいらっしゃった時、「働いているスタッフを見て、普段の教育が見えた、二人の教育やマネジメントだからできたんだと思います」と、言っていただけたことは、うれしかったですね。実際お付き合いはどんのすけオープンからなので1年半くらい、お会いするのは多くて月に1回くらいですが、日本では食事会を開いていただいたり、オープン前から一緒に料理を考えたり、そういう意味では関係性はできていると思います。やはり、社長に任せて頂いている、信頼して頂いている分、しっかり仕事をしようとは思います。ここまで信頼してくれる社長を逆に凄いなとも思いますよ・・・
鈴木 信頼関係の深さが見えますね!
竹本
少し古臭い話に聞こえるかもしれませんが、海外で何かをするとき、乗り込むときは、社長が自ら出てくることが大事なことかなと思っています。難しいとき、できる人材、スキルもあって決断力のある人材じゃないと難しいと思います。ベトナムではその日、その場での決断を求められることがたくさんありますので、何かトラブルがあったときに、本社の判断を扇いでる時間がないんですよね、その場で決断できない責任者では、ベトナム人スタッフからの信頼も尊敬も得られないですよね。
今後の展開
竹本
ベトナムでの新店舗を検討していたり、タイなど海外出店などの誘いもいただいてます。ただ、今はコロナの影響もありますので、すぐに動くべきじゃないかなと・・・今後物件の動きもあると思いますので、タイミングを見計らっている状況ですね。
あとがき
2人が胸に刻むのは、会社理念でもある『本物の日本食を世界の人々へ』という言葉の如く、現地の人に日本食を受け入れられること。そのためには既に勝負の仕方を知っていた7区に目を向けた。彼らたちの戦略や策略、そして目の付け所は、多くの既存飲食店から注目されている。ホーチミン7区を始め、今後の東南アジアを飛躍し、本物の日本食を海外の方々に受け入れられていくのが楽しみだ。
shop information
屋号 | うどんや和食 どんのすけ |
---|---|
電話番号 | 028 5410 9910 |
住所 | 968 Nguyen Van Linh, Phuong Tan Phong, Quan7, TP HCM |
営業時間 | 11:00-22:00 L.O. 21:00 |
定休日 | なし |
shop information
屋号 | 炭焼き和食 かどはち |
---|---|
電話番号 | 028 5417 3883 |
住所 | 950 Nguyen Van Linh, Phuong Tan Phong, Quan7, TP HCM |
営業時間 | 11:30-22:00 L.O. 21:00 |
定休日 | なし |
※上記に掲載されている情報は、掲載日(2020/03/24)現在の情報です。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、各店舗へお問い合わせください。
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