ベトナム・ホーチミンに2店舗出店し、親しみやすいネーミングで心を掴む「IMOTARO」は2012年にベトナムに進出した。その後2014年に「NIKUTARO」をオープン。カンボジアにも進出している吉村真太郎氏(写真)は今でも月に1回プノンペンに足を運び、現場に立つという。同じ東南アジアでも全く違う国の文化を体験している吉村氏。この数年でリアルなベトナムの数字の変化もインタビューすることができた。
ベトナム進出まで
鈴木
ベトナム出店の経緯を教えてください。
吉村氏(以下:吉村)
2006年4月4日に会社を設立し、6月27日に五反田で店舗を立ち上げたのがスタートでした。五反田のお店は順調に売上を伸ばせて、2号店を検討し物件を探していたんですが、良い物件を獲得できなかったんです。うちの内装デザインを担当してくれてた人がホーチミンの「浦江亭」さんを担当してまして、遊びにきてくれたときに「ベトナムに行ってみない?」と声をかけてもらい、ホーチミン視察に来たのが2010年です。ホーチミンに行くのは2回目で、浦江亭さんのオープンの時にも見に来たのですが、ベトナムが良い方に変わっているのを感じました。特に1000円くらいの焼肉定食をベトナム人が美味しそうに食べているのを見た時、可能性を感じたんです。そこから出張ベースで月に1回ベトナムに視察にくるようになりました。自分でホーチミンを見て歩き、人脈を作りながら勝負ができるポイントがどこにあるのか探していましたね。海外でビジネスをしたことがなかったので、まずは日本人を70~80%集客できるエリアと業態が何か考えて、レタントンエリアへの出店、鍋をメインにした総合居酒屋の出店を決めました。
鈴木
ベトナム以外の国は視察されましたか?
吉村
もともと英語圏で出店したいという想いはあったんですが、実際調べてみると、出店コストや洗練された競合レストランなどがある中で、戦えるかといったら少し違うなと思ったんです。そこからは他のマーケットより、ベトナム・ホーチミンで勝ち抜ける方法に時間を使うことに集中しよう!と考えホーチミンエリアしか視察はしませんでした。
鈴木
視察の中で、ホーチミンで成功するイメージはすぐに湧きましたか?
吉村
そうですね、実は「レタントン酒場」さん、「えびす」さん「和伊の助」さん、そして弊社もですが、内外装は全て同じ業者が行っています。なので、ホーチミンでの投資・ランニングコストや家賃・人件費相場などの情報は共有してもらうことができたんです。また「浦江亭」さんの社長さんにも共有して頂けたので、必要な売上数値などは把握できていましたし、イメージが湧けました。
ベトナム出店のメリットや特徴
鈴木
既存の方々の具体的な数字の共有は心強いですね。ベトナムに出店するメリットはなんですか?
吉村
人口はホーチミンだけでも約900万人、全体で約1億人、平均年齢は私が来た当時は27歳。今は31歳で、一般的な企業の平均給与は500ドル〜1000ドルくらいあります。富裕層と低所得者の間の層が増えていることを、来店するお客様の使う金額から感じます。つまり、ベトナム人向けにどのような業態なら受けるのか、ルール化・仕組み化できる戦略を持っていれば、広げられるマーケットがココにはあると思います。
鈴木
最初から現地の人をターゲットに出店するのは難しいでしょうか?
吉村
そのようなことはないと思いますが、強いて言うのであれば「海外での進出経験がない」と難しいと思います。私はプノンペンでもお店を経営しているんですが、イオンモールさんと一緒に出店された日系企業が苦戦しているのを目の当たりにしました。イオンモールさんがプノンペンに出店したときに、日系の飲食店が日本と同じメニューで出店されたんです。カンボジアは、ベトナムと違って名義人なしでも法人設立ができたり、海外送金も比較的スムーズで参入障壁が低いこともありますので。
ところが、カンボジア人を上手にコントロールができず、徐々に味が落ちてきてしまっていたんです。そもそもカンボジアに日本人の駐在が多くいるわけでもなく、誰が食べに来るのかな・・・と思っていたら、ほぼほぼ撤退しちゃいました。ホーチミン・レタントン界隈に出店されてるお店はたくさんありますが、ローカルに受け入れられているお店は、「浦江亭」さんや「Pizza 4P’s」さん、「SUSHI BAR」さんなど、本当に一握りですよね。それくらい現地の人をターゲットにする、というのはハードルが高いと思います。
鈴木
ベトナム人向けには総合居酒屋がいいのでしょうか?
吉村
そうですね、ベトナム人向けの業態には色々な日本料理を楽しめる大箱総合和食店が成立すると思います。逆に最近のレタントンにあるような専門性の高い居酒屋はベトナム人からすると、物足りないお店だと思います。なのでターゲットが日本人になりますよね。ベトナム人の考える日本食は沢山ラインナップが揃ってるような店舗なんです。しかし悲しいことに同じことをしても勝てないんですよ。既存の大箱総合和食店のように、あの価格であのクオリティは出せないんです・・・。
鈴木
吉村さんは今後ローカルターゲットのお店を出店するご予定は?
吉村
実は日本の企業と一緒にパン屋を7区で出店することを検討していて、契約寸前まできているのですが、コロナの影響で一旦ストップになっています。このパン屋出店のためのマーケティング調査は2年くらい行いました。
鈴木
パンでの出店を決めた理由は?
吉村
パンは人種関係なく、台湾、韓国、中華、欧米系みんな食べますよね。しかもベトナム人はバインミーなどが伝統料理にあるくらいパンが大好きです。またイートインもテイクアウトも可能ということも魅力なんです。実際私がベンチマークしている韓国系のパン屋さんは店舗数を増やしていますし、私から見て難しいエリアでも成立しているようなので、やはりパンのマーケットがあると感じています。
ちなみに私は7区に住んで長いので、どのようなマーケットなのかは把握してきているつもりです。家族連れがメインのエリアですので「飲む系」の業態を成立させるのは難しいと感じているんです。
カンボジア・プノンペン店について
鈴木
プノンペン出店のお話をお聞かせ下さい。
吉村
最初は2013年に3人で出資して始めました。マーケットとしても当時、いえ、現在もですが日系の飲食店が少なかったんです。どの業態なら受けるのかをリサーチしたときの答えが焼肉でした。当時オープンして人気だった「SUSHI BAR」さんの横の物件を見つけまして、そこに出店しようと決めました。
鈴木
カンボジアならではの苦労はありましたか?
吉村
カンボジアはスタッフを教育し、オペレーションを仕組み化するのが本当に難しかったですね。悲しいことに、不正が多いんです。真っ当に仕事をしているスタッフに還元できる仕組みにする方法が、とっても難しかったです。不正防止のために、カメラはお店に20台置いていて、何か問題があったときはすぐ画像のチェックをします。仕入れもできる限りチェックし、問題があればすぐ指摘します。責任者を1名置いてあとは任せる、というマネジメントだと破綻すると思います。しっかり管理できる体制を構築しないと、カンボジアは本当に難しいですね。
スタッフの給与面
鈴木
人事制度について教えてください。
吉村
昇給制度があります。全員が一律で昇給する項目もありますが、あとは私とMGRが面談をして、そのときの話し合いの中で決定していきます。評価項目はスキルやマネジメント力などいろいろありますが、フィーリングの要素もあると思います。ベトナムはスタッフ間で給与をオープンにする文化ですので、できる人材を評価する仕組みは、20~30人規模の組織であれば成り立つと思います。
鈴木
給与交渉とかってありますか?
吉村
あります、あります。逆に常日頃から不安や不満があればなんでも話してほしいと伝えていますので、給与に関する面談も行います。そのときに、こちらが納得できる要素があれば検討して昇給することもありますが、納得できる要素がない場合はもちろん受け入れませんし、丁寧に説明します。それにより離職するスタッフもいますが、スタッフが抜けても運営できる組織、体制を常に意識しながら維持しております。
時代の流れによる数字の変化
鈴木
出店されたのが2012年、出店当時と今の違いを教えてください。
吉村
当時の人件費は基本給が3,700,000vnd(約1.85万円)交通費と賄い代に1,200,000(約6.000円)、だったので合計4,700,000vnd(2.35万円)が給与でした。今は基本給5,500,000vnd(2.25万円)交通費と賄い代が2,000,000vnd(1万円)で合計7,500,000vnd(約3.25万円と約2,000,000vnd(1万円)くらい上がりました。
客単価は当時400,000vnd(約2,000円)でしたが、今は500,000vnd(約2,500円)、生ビールの提供価格でいうと当時は28,000vnd(約140円)だったのが、今は48,000vnd(約240円)。仕入れ値が上がっているのもありますが、年々価格は上昇しています。料金設定は周りの店舗のオーナーさんと情報交換をしながら決めていたり、スーパーにいって相場を把握したりしてます。日系もローカルも値上げをしていますので、日本よりも値上げのハードルは低いと感じています。
「IMOTORA」「NIKUTARO」について
鈴木
お店について教えてください。
吉村
客層は、ランチは日本人40%ベトナム人が50%、ディナーで65%が日本人でしょうか。界隈にオフィスワーカーのビルもありますので、集客しやすい場所かもしれません。店は1階から4階までありまして「IMOTARO」の席数65席、「NIKUTARO」は36席です。家賃はこちらに来た当時の価格のままやらせていただけてますので、他のオーナーさんの話を聞いているとうちの家賃は安いと思います。大家さんとは、毎月会ったり、日本からのお土産を持っていくなどして良好な関係を築いています。勿論これは当然なことですが、家賃の支払い期日もしっかり守っているので信頼関係ができているんです。
ベトナムの人件費は先ほどお伝えしたとおり、年々上がっていますので「人件費が安いから」という考えでベトナムに出店するのはナンセンスですね。今後も人件費は上がっていくと思いますので。
進出を検討している飲食へ一言お願いします。
吉村
レタントン、ヘムは既にレッドオーシャンだと思うんです。なので、海外出店経験、情熱がある方にローカル向けのパッケージや業態をもっともっと開発して、本物の日本食を広めていただきたいですよね。7区の「かどはち」さんが日本産米の美味しさを広めてくれてるように、発信力のある商品で勝負していただきたいです。「日本食って本当に美味しい・楽しい」を広める活動に興味をもっている方なら大歓迎です!想像以上にベトナムのローカル企業は強い、というのも認識していただきたいですね。日本で何店舗、何十店舗と経営している横綱クラスのお店でも、ベトナムでは幕下レベルの知名度しかないということを理解して、歯を食いしばってやる。1年、2年は住み込んでやるくらいの覚悟がないと難しいです。今伸びているお店さんは日本人の方が現場に張り付いて営業されてますもんね。最後に大事なことは、信頼できるパートナーを見つけることでしょうか。名義人も大事ですが、飲食経験があるパートナーですね。そういう人と一緒にお店作りをしていければ、物件、メニュー、価格など、そのパートナーの経験から組み込むことが出来ると思いますよ!
あとがき
ベトナムで成功する事をイメージし、早いこと視察する国を絞ったと語る吉村氏。「海外」「東南アジア」と一言で言っても全く違う国の文化や人口、環境の中、しっかりと核を見つけて実践する姿は、今後進出したい方々のお手本となる豪腕力士ではないだろうか。
shop information
屋号 | IMOTARO |
---|---|
電話番号 | 02838223761 |
住所 | 8A1 Le Thanh Ton Q1, HCMC |
営業時間 | ランチ 11:30-14:00 ディナー 17:00-23:00 |
shop information
屋号 | NIKUTARO |
---|---|
電話番号 | 02838226441 |
住所 | 8A1 Le Thanh Ton Q1, HCMC (IMOTAROの上の3階) |
営業時間 | ランチ 11:30-14:00 ディナー 17:00-23:00 土日 11:30-23:00 |
※上記に掲載されている情報は、掲載日(2020/03/20)現在の情報です。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、各店舗へお問い合わせください。
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