今までの生い立ち
鈴木
田端さんが飲食の道に入られたのはいつからですか?
田端氏(以下:田端)
学生の頃、地方でバーテンダーをしていました。当時はお酒全然飲めなかったんですが、お酒の場が好きだったんです。自分がそんな「飲まなくても楽しめる環境」を作りたいなと思い、バーテンダーになりました。飲酒運転の法律が変わり、特に地方のバー業態は集客が難しくなってきて、料理の勉強を始めました。あるお店の料理長を務めるまでになりました。お酒・料理と勉強したら、あとは経営を勉強しようと思い、チェーン店に転職したんです。そこではエリアマネージャーを任され、複数店舗を管理する中で経営の勉強をし、その後に独立したんです。神楽坂で和食とイタリアンの店舗を4年間経営し、その後人形町に出店した焼き鳥の業態が見事に滑ってしまって・・・。
ベトナム進出
鈴木
様々な経験をされてきてるんですね。
「五右衛門」立ち上げの経緯を教えてください。
田端
2019年5月に共同出資でオープンしました。日本の代表がメインで、私も一部出資をしています。物件は代表の知り合いからの紹介でした。当時日本で店長をしていて、次の仕事先を探しているタイミングだったんです。その時に代表に声をかけてもらい、2018年11月に下見に来たのが初ベトナムでしたね。最初は立ち上げだけのつもりでベトナムにきたんですが、居心地良くなっちゃいまして(笑)そのままこっちで現場に立っています。
鈴木
ヘムの中で今の業態を選んだ理由を教えてください。
田端
代表が日本で経営しているイタリアン大衆居酒屋が流行っていまして、レタントンのヘムは日本人が多かったので、イタリアン大衆酒場をそのままこっちに持ってきたんです。
鈴木
あれ、イタリアンの大衆酒場だったんですか!?
業態を変えたきっかけ
田端
はい、実はそうなんです。オープンしてからあんまりピンと来なくって・・・。お客様の様子や雰囲気から、これはイタリアンで続けるのは違うな、と思いました。そこでほとんどのイタリアン系のメニューをなくして、大衆酒場にシフトチェンジしたんです。そんな背景があるので、入り口の提灯に「ジェノベーゼ」とか「カルボナーラ」とか書いてあるんです。今は一切メニューにないんですけどね(笑)
鈴木
確かに、言われてみればそうですね・・・。
業態を変えるのって勇気がいることだと思うのですが、オープン後どのタイミングだったんですか?
田端
看板や屋号を変えるのは勇気がいることだと思うんですが、業態・メニューが多少変わるくらいなら許されることかなあ、と思います。業態を変更したのはオープンして半年も経ってない頃です。確か2・3ヶ月とがだったと思います。それと、イタリアンの時は調味料など日本から仕入れないと行けないものが結構あったので、そこも改善させたかったんです。
業態変更後のお店
鈴木
実際に業態を変更してみていかがですか?
田端
正解はまだ分かりません。ただ業態変更して完了ではなく、まだまだブラッシュアップしていきたいと考えています。メニュー構成もそうですが「五右衛門」としての売りを強くしたいなと。レタントンのヘムの中は専門店が多くなってきていて、大抵のメニューは既にありますので、他と被らずに良い商品がないか考え中です。炭串焼きの評判がとてもいいので、そこは種類を増やしていますね。
オープン時に遡って
鈴木
オープン時に苦労したことはなんでしたか?
田端
いろいろありましたね。例えば内装はローカル企業にお願いしたんですが、我々が思っているイメージと違う方法で進めたりしていたこともありました。素人の僕でも「何でそっちから先にやるの?」みたいな(笑)後は、箸一つ取っても太さが違ったり、イメージしているものが揃わなかったというのは体験しましたね。
鈴木
名義人は代表の方のお知り合いだったのですか?
田端
いえ、私がこっちに来てから知り合ったベトナム人の方です。最初は内装業者の通訳をしてくれていて、仕事仲間として一緒にご飯行ったりしていました。話をしてるうちに性格も真面目で僕と方向性が同じでしたので意を決して聞いてみたら承諾してくれました。
鈴木
店舗を決めた後だったんですね!
田端
そうなんです。実は僕たち・・・初の海外出店で何も知らなかったんです。自分たちの名義で簡単に出店出来ると思ってたんですが、それだと手続きの時間がかかることをこっちにきてから知りました。単純に勉強不足だったんですけどね。
イメージとのギャップ
鈴木
そういった意味で、イメージとギャップを感じたことはありましたか?
田端
こっちに来る前にベトナム人の性格や特徴を聞いていたんですが、良い意味で裏切られました、ベトナム人のスタッフは真面目で良い子が多いのです。日本の友人に紹介してもらった子や、フェイスブックに出して採用した子など、本当にいい子なんですよね。
鈴木
より良い人材を確保するために意識していることは?
田端
「ベトナムだから」という考えはないので、採用・教育には妥協しないですね。我々のお客様は日本人ですので、細かいところで言うと上座から商品出したり、入店時の挨拶をするのもですね。ベトナムは日本文化と違いますが、私の想いや理想のお店像を伝えて、共感してくれた子と一緒に働いています。私の想いは、日本で働いたことのあるベトナム人マネージャーがしっかり捉えて、スタッフに伝わる言い方で伝えてくれるのでとてもありがたいですね。
鈴木
客単価に関してはオープン前とイメージ通りですか?
田端
レタントンにあるお店の状況から日本円で2千円前半くらいを想像していましたが、現状はそれより下回りますね。大衆酒場という名目上、メニュー単価もなかなか上げられない所もあります。
1軒目は居酒屋、その後にバー、最後にラーメンを食べるということが、このヘムの中で出来ますので、お客様が1店舗にお金を費やさない、というのもあるかもしれません。
鈴木
五右衛門さんの店内ってとっても広々してらっしゃいますよね!
田端
1階と2階合わせて70席弱あります。2階は元々左右に2つの部屋があったのを改築し、大人数の収容可能なスペースとなりました、宴会利用も多いですね。宴会メニューはメニューブックに記載していないですが、フェイズブックにイメージを載せています。今は2時間飲み放題付きで550,000vnd(約2750円)、相談して頂ければ内容を変えたり、ご要望の金額で提供できる物をご提案させていただいてます。
仕入れについて
鈴木
現在日本から仕入れるものはありますか?仕入れ状況について教えてください。
田端
仕入れはベトナムの業者さんに頼んでいます。こっちで当たり前に手に入るものは安いんですが、加工品など2.5倍くらい高くなるものもあります。いい品物がいい状態で仕入れことが1番大事なことなんですが、コスト面もありますしね。そこは、近隣店舗と情報交換して評判を聞くことが大事ですよね。
鈴木
特にこの日本人街は日系のお店が密集してますもんね。
出店前にしておいた方が良いことなどありますか?
田端
繋がりを作ることだと思います。私はオープンする2ヶ月前に来て、レタントン界隈のお店さんは飲み歩きました。そこで仲良くなって、色々な人を紹介してもらって、オープンしてからもお店に来てくださったり、先ほどの話のように仕入れのことなど共有してくれたんです。本当にゼロからのスタートだったので助かりました。オープンまでに時間があれば、繋がりを作るのは大切だと思います。オープンしたら色々なことがありますので、そんな時間ないですしね(笑)
今後の「五右衛門」
鈴木
今後の展開を教えてください。
田端
私の他に1人日本人スタッフがいるので、店舗を出店したいなってのは考えてます。こぢんまりと飲めるカウンターみたいなのをイメージしてます。当時は飲めなかったですが、今はお陰様で飲めるようになりましたので、バーとかも良いなあって思っています。
あとがき
壁一面に張り出されたメニューの光景は、まさに日本の大衆酒場を思い出させてくれる。どんな事も「何か」を変えるのにはリスクがあり、一歩踏み入れるのは容易ではない。それでもお客様の表情や反応を見て、違うなと思った瞬間に行動に移せたのは、田端氏の培ってきた経歴からなのだろう。日にひにブラッシュアップし続けている「五右衛門」の今後の展開に期待したい。
追記
今回のコロナ禍に関してお答えいただきました。
鈴木
コロナ前、コロナ中、コロナ後の売り上げの変化はどうでしたか?
田端
コロナ中は営業を中止しておりましたので、ゼロ。コロナ終息後の今としては、常連様が戻ってきてくださっているとはいえ、再営業早々の時は以前の半分以下の集客でした。数週間経った今はなんとか7割ほどに回復している状況です。
鈴木
コロナ中の対策は何か取られていましたか?
田端
もちろんデリバリーも検討しましたが、1か月程度の営業停止で付け焼き刃の不慣れな仕事をすることで、お客様の信用を無くす方が私にとっては怖かったので、じっと我慢してました。
鈴木
今後やろうと思っていらっしゃることはありますか?
田端
今後しばらくは観光客や出張者の方々の集客は見込めないので、今までもベトナム人の集客は取り組んでいましたが、より一層力を入れていきます。
鈴木
田畑さんがコロナから学んだことはありましたか?
田端
当然のことかもしれませんが、ベトナムに進出する以上、現地ベトナム人への認知・食文化の理解を深めて営業に取り組むべきだと思い知らされましたね。
鈴木
ありがとうございました。
何より、一刻も早く、日本-ベトナム間の渡航制限が解除されることを祈ります!
※上記に掲載されている情報は、掲載日(2020/06/04)現在の情報です。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、各店舗へお問い合わせください。