ホーチミンにある古くからの日本人経営の飲食店と言えば、SUSHI BAR、浦江亭、ドラえもんカカが有名だが、寿司、焼肉、居酒屋という日本にある業態である。では、古くからの日本人経営の飲食店でベトナム料理のお店があることをご存知だろうか。日本で言うなればベトナム人が東京で寿司屋を開業するような事を18年前に果たし今も続くベトナム家庭料理店がある。その名は「フーンライ」。
今回はその創業者であり経営者である白井尋氏(写真1枚目左)に話を聞くことができた。ベトナムで飲食店を開業を目指す方や、既に開業されている方々へ向けたメディアということで、取材の終始「私の話は特殊で参考にならない」という同氏ではあったが、開業からこれまでそしてこれからの話は、先駆者としてとても重みのある言葉であり、その姿勢こそがベトナムでベトナム料理屋を経営し続けられる理由なのだと感じさせる内容であった。
フーンライはどういうレストランなのでしょうか————
ベトナムの家庭料理レストランです。また、当店のシェフ、マネージャー、お皿洗い以外のスタッフは全員貧困家庭出身の若者や孤児、元ストリートチルドレンなど、社会的に恵まれない若者たちで、彼らが知識・能力を身に付け、将来仕事に就けるようにワーキング教育をするトレーニングレストランともなっています。スタッフは十分成長できたと感じたらフーンライから新たな地へと旅立っていきます。
フーンライをベトナムでオープンされたきっかけとは————
最初のきっかけは19年前ぐらいにボランティアでベトナムの孤児院を回っていた時のことです。そこには16歳以上の所謂「ティーンエージャー」がたくさんいました。そこの若者たちに何かチャンスを与えたいと感じたのが最初のきっかけです。自分が若者たちのために何ができるかと考えていたのが2000年頃でちょうどベトナムに旅行者が増えてきていた時期でした。そこで私は旅行者の方々に何かベトナムのいいところを伝えたいと思いまして、たくさんあるベトナムの好きなところの中から「ベトナムの家庭料理」を外国の方に知ってほしい、食べてほしいと思いました。「孤児院の若者にチャンスを与えたい」という思いと「ベトナムの家庭料理を外国の方々に食べてもらいたい」という私の思いを合わせて生まれたのがこのトレーニングレストラン「フーンライ」です。ベトナムの家庭料理を外国人の方々へという思いでしたので、当店のターゲットはベトナム人の方々ではなく外国人の方々にしております。ですが、ベトナム人の常連のお客様もおられます。
レストラン開業を決意された際に真っ先にされたこととは————
自分の想いや信念を固める事です。どうしてそのレストランをしたいのか、どういった価値を生み出したいのか、そういった自分の思いをノートに何度も書き出して整理していました。そうして行き着いたのは「若者たちにチャンスを与え、彼らも自分も成長し、このレストランを全ての人にとっての出逢いの場にしたい」という思いでした。
その後、友人を通して自分のイメージ通りの不動産探しからレストランの内装デザイン、家具や食器、制服などのオーダーメイド、メニューブックの作成まで、何から何まで全て自分でやったので外注というのはしませんでした。店のデザインはコロニアル風にしたかったので、コロニアル風の建物の多いハノイまでデザインを見に行ったこともありました。
たくさんの職人や業者、雇い入れたスタッフとのやりとりをほぼ一人でこなしていましたので、オープン当日は嬉しさというのを感じている体力すら残っていませんでした。
写真:白井氏こだわりの内装
物件を借りられてからのトラブルなどは————
当店はトラブルと言えるほどのことはないです。この物件を借りて19年目になるのですが、ベトナムで1つの物件を10年以上借りられることは奇跡的です。なぜかというと大家に追い出されたりだとか、家賃を吊り上げられたりすることが多いからです。ベトナムでは大家の力がとても強いです。これは歴史的出来事が関係していて、昔ベトナムは南ベトナムと北ベトナムに分かれており、戦争をした際に北ベトナムが勝ったので多くの土地を大家として所有しました。現在の大家の多くが北の人たちです。
設計施工に使用した材料の仕入れ先は————
19年前のベトナムでは材料の輸入をしていませんでしたし、出来る限り費用を抑えたかったので完全にベトナム産のローカルルートを通して入手していました。もしその当時外注していたら2、3倍の金額にはなっていたと思います。イスや棚なども一部当時のオーダーメイドの物を使い続けています。私の「こうしたい」という想いを形にした店内の物やデザインを今も大事に保っています。
食材の仕入れ方法は————
ほとんどの食材は配達してもらっています。市場に買い出しに行くのは一部の野菜のみです。魚に関してはその日で使い切るようにしているので鮮度の問題もありません。ワインやビールはベトナムのもののみを揃えております。ですが、ベトナムでは問屋がほとんど機能していないのでブランド毎に仕入れ先が異なりますのでサプライヤーは10社以上です。日本基準で考えたら非常に非効率に思われますが、ベトナムではそうするより他にないので、そういったことをマイナスに考えない方がいいかと思います。
ベトナム人の好まれる味とは————
ホーチミンなどの南部のベトナム人には甘めの味付けが好まれます。当店では砂糖の甘さに頼らず、他の自然甘味素材を使い、体にいい、優しい甘みを出しています。
外国人をターゲットにとのことですがスタッフの言語教育などは————
一から基礎英語とサービス英語を教育しています。外国人をターゲットにした最大の理由は英語で接客してもらうためで、ベトナム人の方々をメインターゲットにすると当然ベトナム語でベトナムの文化に則ってサービスをしてしまいます。しかし、それではスタッフのトレーニングにならないと思ったのです。対外国人の国際スタンダードのサービスを教えるために外国人の方にたくさん来てほしかったのです。
スタッフ教育をされる際に気を付けているポイントは————
スタッフに注意する際はベトナム人に分かる理由付けと愛情を示して注意するようにしています。分かりやすい例え話をすると、招待されたお客様の方に会計をお渡ししたら日本では叱られてしまいます。しかし、ベトナム人にとっては誰に渡しても同じだという認識ですので日本の常識で注意してもなぜそれがいけないことなのか分からないのです。そこで勢いに任せて注意してしまうとスタッフは自分を否定されたと思ってしまうので、「あなたのことは否定していないよ、あなたのことを大事に思っているよ」という思いを様々な方法で示しながら、なぜいけないのか理由をベトナム人の立場で説明し、必ずその後時間をおいて肯定的なフォローを入れるようにしています。
今後ベトナムで開業したいという方々へメッセージを————
まず、ベトナムの方々へ敬意と好意を持ち、それを示すことが大切だと思います。敬意と好意がないとベトナム⼈にすぐに⾒抜かれて協力や信頼を得るのが難しくなります。ベトナムでの全て活動や事業はベトナム⼈の協⼒なしには成り⽴ちませんので、ベトナムに対して敬意と好意を持ち、そして物事を肯定的に⾒て受け⼊れると物事は進みやすくなるかと思います。
店名:Huong Lai
アドレス:38 Ly Tu Trong Q.1 Saigon (2F)
営業時間:LUNCH:11:30-14:00(Last order) CLOSE:15:00
DINNER:18:00-21:00(Last order) CLOSE:22:00
電話:(84-8)3822-6814 /0986264854
0903666346(日本語)
※上記に掲載されている情報は、掲載日(2019/04/03)現在の情報です。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、各店舗へお問い合わせください。
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