初めてホーチミンを訪れた人は、街中を走るバイクの数に困惑することだろう。ベトナムの世帯当たりのバイク保有台数は、タイに次いで世界第二位であり、とりわけホーチミンでは、ベトナムの他の省や地域と比較してもその台数は飛びぬけて多い。ホーチミンの交通事情に関しては、大手不動産会社であるVINグループが欧州企業の協力を得て初の国産車の開発に着手しており、2019年6月に自家用車の販売を予定しているほか、ホーチミンでは、2020年の完成を目標に大規模な地下鉄建設計画が進められているが、自家用車は一般市民にとってはまだ手の届きにくい高価な乗り物であること、また地下鉄建設も当初の建設計画予定である2018年を大幅に伸びていることなどを考慮すると、市民の交通手段はしばらくは現状のままであると予想される。
通勤通学ラッシュの時間帯に、バスの隙間を縫って進んでいく親子4人乗りや、絶妙なバランスでバイクの上に寝そべって昼寝をするセオムの運転手の姿は、日本では見ることのできない光景であり、ベトナムらしさを強く感じさせる。バイクと共に生活をしているベトナム人の姿を見ていると、「自分もバイクを運転してみたい」という思いを抱くこともあるが、残念ながらベトナムは国際免許証の条約を日本と結んでいないため、日本の国際免許証を所持していたとしても、ここベトナムでは無免許運転と同等の扱いとなってしまう。日本の免許から書き換える方法もあるが、駐在などで日本の会社から一時的に出向している場合、安全上の問題から現地での運転を禁止する会社が多いのが現状だ。
そんな駐在員の交通手段の一つとして選ばれるのが、タクシーである。ホーチミン市を紹介する観光ガイドでは、トラブルの少ないタクシー会社として白色のVinaSunタクシーと緑色のMaiLinhタクシーを挙げていることが多いが、実際ベトナム人であってもトラブルを避けるためこの二社以外のタクシーは敬遠する傾向にあるようだ。
○乗車時は小額紙幣を用意して
ベトナムでは、小額紙幣があまり流通しておらず、代金は四捨五入して支払うことが一般的だ。会計の際「1,000ドン持ってる?」「あと5,000ドンある?」と聞かれることも珍しいことではなく、レストランで食事をして代金を支払ったのにいつまで経っても店員さんがお釣りを返しに来ないと思ったら、お釣り分は切り捨てられていたということもある。
もちろんタクシーも例外ではない。一度50万ドン札しか持たずにタクシーに乗ってしまったことがあったのだが、案の定お釣りがなく、運転手が待ち合いのタクシーに一台ずつ声を掛けてお釣りをかき集めてくれた。生憎、その日は雨だったので、ずぶ濡れになった運転手に何度もお礼を言って車を降りた憶えがある。
とは言え、お釣りの額が1,000ドンや2,000ドンであれば、切り捨てる運転手のほうが多いのが現状である。これは、その運転手が悪いというわけではなく、あくまでもベトナムの一般的な習慣だ。しかし、例え日本円では5円、10円といった小さな額であっても、塵も積もれば・・・であるから、毎日タクシーで通勤をしている駐在員にとっては、1か月分、1年分ともなるとそれなりの負担になってしまうことだろう。
○必要に応じてタクシーカードの利用を
そこで活用してほしいのが、タクシーカードである。ベトナムの大手タクシー会社の多くは、タクシーカードを発行している。ここでは、VinaSunを例にタクシーカードの発行方法と利用方法について紹介しよう。
まずは、VinaSunのホームページから利用申込書を資料請求し、送付された申込書に必要事項を記入。法人であれば500万ドンの保証金を支払うと、およそ数週間でカードが手元に届く。個人の場合は、必要に応じて保証金の額を増額することができ、支払った金額の半額を上限としてカードを利用することが可能だ。支払の際は、運転手にカードを渡し、カードリーダーで読み取ってもらってから端末にPINコードを入力する。料金メーターとカードリーダーは連動しておらず、運転手が手打ちで金額を入力するため、間違った金額を打ち込まれないよう注意してモニターを見ておく必要がある。(実際、トラブルが少ないといわれているVinaSunでも、メーターと異なる金額を入力されかけて、「それは間違っていますよ」ということもあった)。レシートを二枚渡されるので一枚にサインをして返却し、もう一枚は控えとして取っておく。翌月になると指定の住所にひと月分の利用明細と領収書が送られてくるので、控えのレシートと利用明細の内容との間に誤りがないかを確認して、領収書の金額を指定の銀行口座に振り込めば完了だ。これで、小額紙幣がなくてもタクシーに乗車することができ、運転手がお釣りを持っていなくても金額ぴったりに支払いをすることが可能になる。一度カードを手に入れれば、ホーチミン以外にもダナン、ビンズオン、ドンナイ、ブンタウ等、ほかの市や省でVinaSunタクシーに乗車したときにも利用することができ、また領収書は一枚で済むので、毎月の経費申請の手間が格段に省ける。社用車や会社と契約している運転手付きレンタカーなどがない場合、必要に応じてこうしたタクシーカードを利用するのもひとつの手だろう。
ただし、カードを紛失したときや利用明細の金額に誤りがあるときなど、どうしても直接やり取りしなければならない状況が発生することもあるだろう。VinaSunのホームページには、英語でのお問い合わせフォームがあるが、実際にどこまで英語に対応しているかは分かり兼ねるので、ベトナム人の現地スタッフやベトナム語に長けた日本人を採用している企業様向けであると考える。タクシーカードの導入を検討する際は、注意が必要だ。
※上記に掲載されている情報は、掲載日(2019/01/30)現在の情報です。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、各店舗へお問い合わせください。
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